multilingualpaw’s blog

多言語学習 x『パウ・パトロール ザ・ムービー』

日本語版のパウパトロール映画を見て気づいたこと

外国語音声で何度も見た後に、日本語音声を見ると、色々な違いに気づく。日本語版だけ、あちこち、"創作"している。

その細かい"創り"を積み重ねていくと、日本語版スタッフ達の狙いというか、パウパトロールブランドへのこだわりがちょっと見えてきた。

 

チェイスたちを、絶対に「犬」扱いしないこと

チェイスたちは、悪人を"逮捕"はしないこと

③ケントの性格の作り込みと、チェイスたちのキャラクターの作り込み

 

 

①「犬」扱いしないことについて

私はこの映画を見るまで、アニメ本編をほとんど見たことがないので、しばらく気づかなかったけれど、どうやら日本語版では、チェイスたちのことを「犬」呼ばわりするのはご法度みたい?

映画の中で、英語版・その他西洋言語版は、いくらでも「puppy」「pups」が出てくるし、「german shepherd」「bulldog」といった犬種名も出てくる。

でも、全てにおいて、日本語版では、「チェイス」や「みんな」などのように名前や人称に変わってるし、犬種名の部分については、「耳がぴんと立った・・・」「嬉しいんや」などのように直訳を避けている。

物語冒頭で、ドライバーとの会話で「チェイスだよ」「は?アイス?」という部分も、元は「まだ僕は子犬だよ」「は?更に状況が悪い!」という会話だった。

何故アイスなどと苦しいギャグを入れなければならないんだ?と冒頭で面食らっていたんだけど、最後まで見てやっとわかった。日本語版では、「犬」という言葉は絶対に出てこないようになってるんだ。

なぜだろう?と考えて予想できる答えは、日本の子どもたちに、犬としてではなく、人の友達と同じような立ち位置でチェイスたちと仲良くなってほしい、と考えられてのブランディングなのかな?と思い至る。アニメ本編を見てみないと、確信は持てないけれどね。

そういえば英語版で頻繁に出てくる「アゥ、アォーーン!」という子犬達の可愛らしい鳴き声も、日本語版では全て「ワンダフル〜!」等の別のセリフに変えられてあったなあ。

 

チェイスたちは、悪人を"逮捕"はしないこと

上記の「アイス」と同様に、苦しい聞き間違いを挿入してきたな〜と感じたのが「俺はパウパトロールチェイスだぞ!」「ペロペロキャンディーのアイスだって!」ってところ。英語は「お前を逮捕するぞ!」「わー、逮捕されちゃうー、ぎゃははは」みたいなセリフ。なぜわざわざペロペロキャンディーにするの???という疑問が晴れたのは、物語のラストでライバール市長を捕獲するところ。英語版では「数々の悪事を働いたので、逮捕する!」とチェイスが言ってる。日本語版では「ちゃんと謝るんだ!」になってる。

日本語版のチェイスたちの世界に、逮捕する/されるの概念がないんだ。なるほどね〜。子どもアニメの世界に、リアルな警察の業務は持ち込まないようにして、マイルドにしてるんだろうな〜。

ま、スタッフクレジットではライバール市長が牢屋に入れられてるし、映画第二弾でも牢屋からのスタートだったけれどね。(この世界に牢屋が存在してることにびっくりした)

 

…と、ここまで記事を書いて数日後、「日本語脚本」についての記事を発見。①と②の考察が正しかったことが証明された〜。(リンク先のインタビュー記事1ページ目の最後の方参照)

natalie.mu

 

③ケントの性格の作り込みと、チェイスたちのキャラクターの作り込み

これまでの①と②の考察で既に、日本語版のパウパトロールの世界観は、英語版のをそのまま直訳するものではないことが分かった。日本の子どもたちに、より愛してもらえるように、創意工夫が施されている。

では他の言語ではまるきり英語版に忠実なのかというと、そうでもない部分がある。キャラクターの声だ。

いつか別の記事でまとめたいなと思うので、ここでは主だったものだけ。

 

まずケントについて。

日本語版のケントは、他の言語の中で一番タイプが違う。ゆっくりとした声で、優しい間<ま>を演出している。いつでもどんな時でも、落ち着いていて冷静に判断する性格をしているのが伝わってくる。チェイスたちが怖がったりすることが絶対にない、信頼のおける理想のリーダー像って感じ。

他言語のRyder達は、レスキュー隊を束ねるリーダーという風格が強く、たまにぶっきらぼうなセリフも出てくるし、ピンチの時は、ちょっとだけ、情けない声が出たりもする。

Ryderの声質で、その言語の世界に於いて「理想の男の子友達の声」も透けて見える気がする。

 

次にチェイス

低めの声の言語もあった。ジャーマンシェパードというイメージなのかな?

 

更にリバティ。

英語版も、有名人を起用したプロモーションをしていたらしい。(この辺あまり詳しくない。)興奮すると掠れ声になる女性の声が、リバティにピッタリだと感じる。他の言語も、そのあたり共通していたな〜。

日本語版は元モー娘。安倍なつみさん。ごめんなさい、なぜ起用されたのか、当時のニュースとかよくわからないのだけれど、元気いっぱいに動き回る躍動感が伝わってきて、とっても可愛かったな〜と思いました。

インタビュー映像を見つけた!

 

その他パウパトローラーズについて、日本語版に於ける特徴は、なんといっても「決め台詞の有効活用」!英語版でセリフがないところに、セリフが作られてる!!出動シーンは必ず!全員!平等に!決め台詞が入ってる。これには笑った。そこまでするか。いや、そここだわるよね、やっぱり。

 

 

以上、通算20回くらい映画を見て見つけた日本語版のこだわり制作ポイントでした。

他の国のプロモーションのこだわりは何かあるのかな〜、気になるけどどうやって調べたらいいのか不明・・・。